事務所通信

事務所通信 平成29年12月

つれづれ日記 12回目

今年ももう年末がちかくなり、あわただしい状態となりました。今年も舩橋会計はお客様にたいへんお世話になりました。ありがとうございました。日々の仕事の不手際からお客様へのサービスに不備があったり洩れがあったりしたこともあったと感じております。来年は事務所のサービスレベルを徐々にアップして、お客様を最大限サポートさせていただきたいと考えております。来年もお引き立てのほどよろしくお願いいたします。

来年も舩橋会計の経営理念と行動指針は変わりません。これら事務所の憲法を死守して、独自性のある税理士事務所を目指し、お客様の経営に貢献していきたいと考えております。

舩橋会計の経営理念  月光闇夜(げっこうあんや)
暗闇の中を歩く、経営者の足元を照らす月の光になりましょう。という理念です。月の光というのは、太陽と違って控えめに光ります。あまり主張しません。ですが、目を痛めずに月は見ることができます。優しい光です。就寝前に月を眺めれば、きっと良い夢を見ることが出来ます。

舩橋会計の行動指針
① 記帳代行をしない
② 巡回監査を行う
③ 継続MASの活用

① 記帳代行をしてしまうと、経営の情報や資料を会計事務所が囲い込んでしまうことになります。社長にとって重要な情報は、蚊帳(かや)の外になってしまいます。これでは、強い経営者になれるはずもありません。ですから、私達は会社ご自身に会計データを入力していただき、いつでも自宅や会社にいながら、新鮮な経営情報を確認できるようにしていただきます。これを自計化(じけいか)といいます。

② の巡回監査というのは、お客様の会社や事務所に訪問するということです。現場に行かなければわからないことも多いからです。巡回監査をすることにより、記帳適時性証明書や書面添付が行えます。これらをおこなうと、金融機関からの借入がしやすくなったり、税務調査の可能性が低くなります。これは、TKCシステムでしか行えません。

③ 継続MASの活用をとおして、事業計画を社長に作っていただきます。これは、基本的に毎年作成します。「思うところに道は開ける」というのが私の感覚です。もっとも大切なのは、人脈や財力や経験でなく、「思うこと」だと考えております。未来を思いえがいていないのに、理想の未来がやってくるはずがありません。今日カレーを食べた。それは、カレーを食べたいと思ったからです。未来の青写真を具体的に鮮明に思い浮かべることが出来たのなら、その夢はその時点で90%かなったと言ってもよいのではないでしょうか。後は、準備をして帆を張るだけです。帆を張ったなら、風を待つだけです。

こんな具合で、平成29年も私の独断でいろいろなことをお話しさせていただきました。もしも不快に感じるところがありましたら申し訳ございませんでした。そして、来年もこんな調子で私の独断でいろいろなことをお話ししてしまうことと存じます。それもこれも、ただお客様の経営が良くなっていただきたいと強く願うからでございます。
人間は、本当に強い気持を持つと、そこに何かしらの熱を持つものでございます。その熱を活字にすると、こんな文章になってしまうのであります。ですから、仕事の休憩時間やお暇をもてあましてしまったときに、事務所通信をサラっとお読みいただき、少しでも今後の経営のご参考にしていただけましたら本望でございます。
今年は、本当に皆様方にお世話になりました。ありがとうございました。


トヨタ堤工場見学

平成29年12月11日、トヨタの堤工場を見学してまいりました。今振り返って思うことは、「良いものを見せていただいたな」ということです。ピアノ演奏会やレベルの高い試合を見た後に、今日は良いものを見ることが出来た、と感じることがありますよね。そんな感覚です。工員さんの無駄のない動き、整然と並べられた棚、工場とは思えないような清潔な床、究極に効率を目指した無機質の集合体は芸術的な美しさをまとう・・・そういった良いものを見たという感覚が残りました。
さて、トヨタはなぜ世界№1の車両メーカーになれたのでしょうか?理由は複数あると思いますが、私が知る限りではそれは在庫管理にあると思います。たかが在庫管理で世界の№1になれないでしょ、と思われるかもしれません。しかし、メーカーにとって、無駄な物を造ってしまうということは、倒産に直結します。車という複雑で工程の長い製品は、あらかじめ作成しておかなければ、すぐに販売することが出来ません。あらかじめ作成するということは、売れ残り、つまり在庫が増えてしまうことになります。
トヨタは、注文を受けてから製品を作り始めるという方法を考え出しました。必要な時に、必要なものを、必要なだけ生産するというJUST IN TIME (ジャスト・イン・タイム)方式です。このジャストインタイムを可能にしているのが、トヨタの看板方式です。
私はこのジャストインタイムや看板方式に興味があるわけでは、ありません。私が興味を注いでしまうのは、トヨタが世界№1になり得た理由が、特許でも天才科学者でもなく、「在庫に着眼した」という事実です。アインシュタインのような天才科学者がいて、誰も作れないような車を造ったわけではありません。普通の社員が日常業務の中にある「在庫管理」に着眼し、この在庫管理から生ずる無駄を省けば会社が強くなると気づいたことです。その平凡な日常の気づきが世界的な会社へと導かせた。つまり革新的なイノベーションが日常のふとした気づきの中から生まれたということに、驚きと感動を禁じ得ないのです。
これは私達ファミリー企業にとって、とても勇気づけられることだと思うのです。私達ファミリー企業は、人的にも財務的にも制限があります。その中で特許を取得したりヒット商品を世に生み出していくことは大変なことです。しかし、日常のふとした気づきからアイデアを出して、日常の業務に少しづつ修正を加えていくことで、独自性のある会社になれるということをトヨタは教えてくれているような気がするのです。高い利益を出して従業員さんに豊かな生活をしていただくために、ものすごい発明をする必要はなく、ものすごい商品を生み出す必要もないのかもしれません(もちろんそれらはあった方が良いのですが)。

日常のふとした気づきは、時間が経過すると霧(きり)の中へと入ってしまいます。霧の中へ入ってしまう前に、それを言葉にして人に伝えて行動していく、そしてそれを積み上げていく、そういった単純作業の繰り返しでもイノベーション(革新)は起き、独自性をもった会社になるような気がします。ふと、「あれ、これおかしいな」とか、「ちょっと、へんだな」と思ったら、それはチャンスなのかもしれません。そのふと感じた小さなモヤモヤを信じてあげて欲しいなと思います。
この小さな気づきは、会話から生まれることもあると思います。会話をすると反対意見や自分とは違った角度からの考えを聞くことが出来るからです。自分と違う視点を聞くことによって、人は俯瞰的(ふかん的・全体をみること)になれます。俯瞰的になることによってクールになることが出来ると思います。いつもクールに未来を考えている経営者は、人を叱責したり、人を恐怖によってコントロールしようとはしないと思います。
そしてこの会話の相手として、ふさわしいのが従業員さんだったりお客さんだったり取引先だったり家族だったりします。でもこういった身近な人には、言えないこともあったりします。そうやって考えると、社長さんの周りに人はたくさんいるんだけど、社長ってとても孤独な存在といえるのではないでしょうか?自分のすぐちかくに人がいるのに、その人に助けて欲しいのに、その人に本音が言えないんですから。
そこまで社長の状況をみてくると、唯一、会話相手としてふさわしい人物が登場してきます。それは、会計事務所の人間です。会計事務所の人間というのは、守秘義務をもっており、仕事の利害関係がなく、その会社の数字の全てを知っているのですから。逆に、せっかく税理士報酬を支払っているのなら、税金の計算だけでなく経営の悩みも話して少しでも楽になれた方がお得ではありませんか。
私達には、社長のお話しをお聞きする準備がすでに出来ております。私達は、社長の小さな言葉に耳を傾ける意志がございます。私達は、社長に100のアドバイスをすることよりも、一つの良質な質問をする方が社長の幸福につながると考えております。もしも社長業としての孤独に押しつぶされそうになったときには、良き会話相手として会計事務所の人間を思い出してください。


リードタイムを意識して
別紙でトヨタのイノベーション(革新)は、在庫管理にあった、というお話しを致しました。
在庫管理という日常業務を改善することで、なぜ独自性が生まれ、大きな効果があるかを、もう少し詳しく説明致します。

物を販売するためには複数の工程を通過します。それを下記に言葉で箇条書きにします。
① まずは素材を購入します。
② その素材にプレス加工や溶接・塗装・部品取付などをして、製品にします。
③ その製品を倉庫に在庫として保管します。
④ 消費者からの注文が入ります。
⑤ 製品を販売してすぐにお金がもらえないので、それは売掛金(後でお金をもらう)になります。
⑥ 売掛金を回収して、現金を得ます。

この①から⑥までの工程には時間がかかります。この時間のことをリードタイムと言います(管理会計の世界で)。このリードタイムには、倉庫の保管日数や売掛金の回収日数も含まれます。リードタイムが短ければ短いほど、経営のリスクは減少します。反対にリードタイムが長ければ長いほど、損失が生まれます。トヨタのJUST IN TIMEは、このリードタイムを極力短くすることを目的にしております。

通常の決算書からは、利益しか見えません。利益には、リードタイムという時間の概念が存在しません。この利益を生み出すために、何人の人がどれだけの時間をかけたのかということは、決算書には出てこないのです。もう少し簡単にいうと、ラーメンを10杯販売するのに、30分で販売するよりも10分で販売する方が利益が出るということです。

また上記③の倉庫保管では、在庫の量が少ないほど倉庫の敷地面積も少なくて済みます。つまり地代が低額で済みます。そして在庫の量が少なければ、売れ残りつまり廃棄損が出にくいとなります。
通常の経営者ですと、在庫が多いと、「まだまだこれだけ売れるのか、楽しみだ」と考えます。しかし、卓越経営者は、「在庫が売れ残ったらどうしよう。これは大きなリスクだ。」と考えます。

⑤の売掛金がたくさん残っていますと、通常の経営者は、「これからこんなにたくさんのお金が入ってくるんだ。よかった。」と考えます。しかし、卓越経営者は、「これだけたくさんの売掛金があるということは、それだけ回収不能になる可能性が高いということだ。どうしようか。」と考えます。

上記①から⑥までのリードタイムを短くして、リスクや無駄をどんどん省いていく、そういった時間を意識した経営をすると、その会社は強い会社となっていきます。
決算書や試算表からは、そのリードタイムは出てきません。リードタイムを正確に知るには、現場で計測する必要があります。
ときには、右手にストップウォッチをもって、その工程に何分かかるのかを計測する必要もあるでしょう。単に利益が出ればいいということではありません。利益の質が問題です。利益というのは、あまり時間をかけないで出す必要があります。

手際の良い大工さんほど、丁寧に良い家を造るといいます。スピードの獲得は、品質の犠牲にはつながりません。

右手にストップウォッチ・・・・であるなら、左手にはコーヒーカップを持ちませんか。そして、私達と会社の未来についてお話ししませんか?