アパートを購入すると、どうして相続税が減少するのか?
相続対策として「アパートの購入」や「アパート建築」が注目される理由のひとつに、「相続税の圧縮効果」があります。では、なぜアパートを所有すると相続税が軽減されるのでしょうか?この記事では、その仕組みと注意点についてわかりやすく解説します。
1. アパートは「評価額」が大幅に下がる
土地や建物を相続する際の評価額は、時価(実際の売買価格)ではなく、**「相続税評価額」**で算定されます。アパートを建てることで、この評価額が大きく下がるのです。
● 土地の評価が「貸家建付地」になる
アパートを建てて貸し出している土地は、「貸家建付地」として評価され、通常の「自用地(自分で使っている土地)」よりも評価額が低くなります。具体的には、「借地権割合」や「借家権割合」などを用いて計算し、20〜30%程度下がるケースもあります。
● 建物の評価も「固定資産税評価額」
建物の評価は、実際の建築費ではなく、「固定資産税評価額」で評価されます。これは建築費の6割前後になることが多く、こちらも評価額が低くなります。
2. 実際の価値よりも低い金額で評価される
アパートを購入(または建築)することで、実際にかかった費用よりも相続税上の評価額が低くなる「評価減」が生じます。
例えば、1億円でアパートを建てたとしても、相続税評価額は7,000万円程度になることがあります。つまり、3,000万円分の相続財産が圧縮されることになり、その分、相続税が減額されるのです。
3. アパートを建てることで、現金を不動産に変える
現金は、額面どおり100%の評価で相続財産として計上されます。一方で、その現金を使ってアパートを建てることで、評価が圧縮され、相続税を下げることができます。
つまり、評価額の高い現金を、評価額の低い不動産に変えることが節税になるという考え方です。
4. 借入金を利用すれば、さらに節税効果が高まる
アパートを建てる際に金融機関からの融資を活用すると、相続財産から「債務控除」が可能です。つまり、相続時に残っている借入金はマイナスの財産として差し引くことができ、課税対象額がさらに減ります。
たとえば、1億円のアパートを建てて、8,000万円を借りていた場合、建物の評価額が6,000万円で、借入金が8,000万円なら、むしろマイナス評価になることもあるのです。
5. 相続税が減るだけでなく、家賃収入も得られる
アパートは相続税の評価を下げるだけでなく、毎月の家賃収入という安定したキャッシュフローも生み出します。相続対策と同時に老後の資産形成にもつながる点が、不動産投資の魅力です。
6. 注意点:将来の空室リスクや修繕費用も考慮を
ただし、節税目的だけでアパートを購入・建築するのは危険です。以下のようなリスクも理解しておきましょう。
- 空室リスク(家賃収入が見込めない)
- 修繕・維持費がかかる
- 将来の不動産価格下落
- 管理の手間やコスト
不動産会社や税理士とよく相談し、節税効果だけでなく、収益性や将来の資産価値も総合的に検討することが重要です。
まとめ
アパートを購入・建築することで相続税が減るのは、評価額が実際の時価よりも大きく圧縮されるためです。現金を不動産に変えることで評価を下げ、さらに借入金を活用すれば債務控除も可能となります。
しかし、節税効果ばかりに注目せず、将来的なリスクや収益性をしっかり見極めて計画を立てることが、成功のカギとなります。
税理士 舩橋信治 対応エリア:小牧市、岩倉市、春日井市、江南市、大口町、犬山市等 税理士・会計事務所