事務所通信

なぜ会計が必要なのか

会計、経理をいくら真面目にコツコツやっても、それでお金をもらえるわけではありません。なので、ついつい経理処理が遅れがちになってしまいます。でも結果だけを見てみると、会計処理が遅れていない会社は、遅れている会社に比べると、倒産する可能性が低いです。

なぜ経理が遅れずにしっかり出来ている会社は、業績が良い傾向にあるのでしょうか?諸説ありますが、私は、「会計資料は経営者を考えさせる力があるから」だと思います。

パスカルは、「人間は考える葦(あし)である。だから人間は尊いのだ。」と言いました。パスカルは10歳にならない頃から数学の証明問題を解き、16歳で難解な数学理論を発見しました。つまり神童です。そんなパスカルは、確かに考える葦でしょう。
しかし、我々のような凡人は、「考えられない葦」ではないでしょうか。私は、間違いなく考えられない葦です。
だって、ビスケットを食べながら昼寝をしていたいし、ビールを飲みながら007を見ていたいし、哲学書を読むならマンガを見ていたい・・・つまり、考えていたくはないのです。楽だから。考えるという行為は、苦痛なのです。

そんな考える事が苦手な私でも、時折考えることがあります。それは、人と会話をしている時です。会話では質問を受けるし、自分の声を聞いてくれる相手がいるからでしょうか、とにかく会話をすれば考え出します。

会計資料を見ながら会話をすれば、経営について考える時間が増えるはずです。私は、経営について考える環境・素地・たたき台として会計が必要だと思います。

逆に会計資料がない状態で、数値を伴わない会話ばかりしていたら、軌道のそれた、自分の定点の確認のない考えばかりが袋地のようにグルグルと回るだけになってしまいそうです。

例えば舩橋会計の私達に唐突な質問をいきなりして下さい。会話は、いつも、いきなり始まるものです。そして、「さいきん、うち、どう」とか、「なんで、うちの売上下がったんだろう」とか、「どうして工場の換気扇が壊れたんだろう」・・・なんて、「そんなの社長が考えることじゃん」とつっこみたくなるような無責任な質問を投げかけてください。質問の内容なんて、なんでもいいのです。大切なのは、とにかく会話を始めることです。
会話のモティーフは、偶然です。考えるきっかけも偶然です。私達は、偶然の中で生活しています。

「人間は考える葦である」、パスカルの言葉の裏には、考えることのなかなか出来ない私達への励ましの気持ちが込められているように感じます。そしてパスカルの足元にもおよびませんが、少しでも考えるということをしたいと思います。会話という、他者の力を借りて。
おそらく会計が遅れずに処理されている会社が倒産しづらい傾向にあるのは、会計資料が、経営者が経営を考えるモティーフになっているからだと推測します。