事務所通信

オリジナルな問い が大切

令和4年7月29日
お客様各位
税理士 舩橋信治

 この文章は、舩橋会計のお客様に同じ文章をお送りさせていただいております。

テーマ  「 オリジナルの問い 」

 コロナ感染や円安・戦争により、経営がいっそう厳しい状況になってきました。こんなときこそ、もう一度経営について考え直してみたいと思います。

 舩橋会計の経営理念は、「月光(げっこう)闇夜(あんや)」です。闇夜に迷う経営者の足元を、月の光で優しく照らしましょう、という意味です。ここでは、暗夜(あんや)と書かずに、闇夜(あんや)という字を使っております。この闇(やみ)という字には、月の出ない夜という意味もあります。

 私は、経営者の闇には、二種類あると感じています。一つは、資金繰りが上手くいかない、とか、利益が出ているかわからない、といった受動的現実的な闇です。二つ目は、経営戦略を考え、それが見いだせずにもがくという自ら飛び込む能動的な闇です。

 そして今回は、二つ目の自ら飛び込む能動的な闇について考えてみたいと思います。「人は努力をすれば迷う」これは、ゲーテが死ぬ前に残した言葉です。努力して売上を上げようとしている人間は、闇の海原へと小舟を一人でこいで船出します。灯台の光もありません。間違えて岸に近づけば座礁して転覆するかもしれません。また目的地さえ決まっていないので、用意した食料と水がどこまで持つか見当もつきません。これが迷っている経営者の姿です。

 いったい彼は、何を見つけようとしているのでしょう?それは、自分だけが発見したオリジナルな問いに対する答えです。

例えば美容院を経営しているとします。この業界では、若い人の離職率が高いことがもはや業界内での常識となっており、それに対して誰も問題意識をもっておりません。でも、ある経営者だけは、これがどうしても気になります。どうしても不自然に感じます。なので、美容院において若い人の離職率を下げる挑戦を一人で挑むことになりました。答えは、ありません。自分自身しか感じないオリジナルの問いがあるのみです。

 著しい業績を上げている経営者の共通点は、オリジナルの問いを持っている、そしてそれに挑戦している、という点です。経営成績を向上させる試みは、いろいろあると思います。ゴルフ接待をする。広告費をあげる。社員教育に力を入れる。などなど。それらの中でもっとも効果的なのは、経営戦略を考えること、というデータがあります。そしてその経営戦略は、経営理念と密接な関係があると、経営学者の中では言われております。

 なぜ経営戦略と経営理念に関係があるのか?それは、どちらも損得勘定を超えた、自我を超えたところにあるからです。自分がお金持ちになりたい・・・という発想は、経営戦略ではありません。
業界や社会の中の欠乏を補いたい、自分の会社を社会のための公器としたい、という欲のない発想からしか独特の経営戦略は、生まれません。
また経営理念は頭の中で考えて作為的に作り出すものではなく、手痛い失敗やクレームから気づきを得た授かりものみたいなところがあります。ですから、経営戦略と経営理念は、欲がないというところが共通します。

 ちなみに上記美容院の社長は、社員寮を作り、店長になれば独立した以上の給与を支払い支店を30店舗以上作りました。社員は、全国から集まってきます。あだ名は、「お大臣」で、何かと金払いが良いそうです。そして、この成功の裏にあったのは、業界に対するオリジナルの問いであり、その問いが生まれたのは、自我や欲を超越した心をもっていたからです。

 おそらく誰の耳にも、オリジナルの問いのきっかけとなる社会的問題が小さなメロディーとして耳元で流れているのだと思います。でもそれは、もっと大きなメロディーによって打ち消されてします。その大きなメロディーとは、もっとお金が欲しい、もっと売上を上げたい、もっと楽になりたい、もっと確実性が欲しいという自己実現のメロディーです。舩橋などは、このメロディーが頻繁に耳元でなるので、自己を超越できない凡庸な自分をいつも感じてしまいます。

 一人っきりで闇夜の大海原に旅立つ決心をした経営者は、サポートの必要性が高いと感じます。またこのような経営者は、緊急的に無条件で支援する必要があると考えます。オリジナルの問いをもってそれに挑む経営者は、1%もいないと経営学者は言います。でも少ないがいることはいる、のは確かです。

 ひるがえって舩橋会計のお客様を思い起こしてみると、私にはお客様全員がオリジナルの問いをもち、灯台の光もない真夜中の海をオールをこぎながら進んでいるように感じます。そして遠い岸辺には、小さな光がともっていて、その光だけを頼りに進んでいるようにも感じます。最終的にその光にたどり着いたときに、大きな社会的称賛と富を得るのだろうと思います。

 ですから舩橋会計としては、闇の中で迷うお客様に月の光を送らなければなりません。それは、社長様に対するメールだったり、電話だったり、会話だったりします。

 私たちは、社長様の代わりにオリジナルの問いに対する答えを見つけることはできません。私たちに出来るのは、社長様に経営を考えるきっかけを作るところまでです。

 例えば月次監査の完了報告のメールが社長様に届いたら1分でもいいから資料を見ていただき、何か経営のことを考えていただきたいと思います。

 私の頭の中には、闇夜の大海原をオールをにぎりしめ遠い岸辺を見ている社長様の背中がいつもイメージとして存在しています。そしてそれが脳裏に浮かぶと仕事上の細々とした悩みはなくなってしまい、今からすぐに社長のところへ行かなくちゃ、と思ってしまいます。現実には、時間もなくアポもなくすぐに行けるわけではないのですが。

 おそらくこういう気持ちは舩橋会計のスタッフ全員がもっていると思いますし、それがお客様に伝わるように表現していかなければならないとも思います。ただ実際に社長様に対して言葉で進言するというのは、なかなか出来ることではありませんので、送られてくる資料の裏にあるスタッフたちの必死の願い、どうか経営が上手くいきますようにという願いを感じ取っていただければ幸いです。

願いと言えば、ちょうど今日あたりは、旧暦の七夕に当たる頃ですね。電気を消せば、闇の銀河に流れる天の川を横切る流れ星が見えるかもしれません。心静かにすれば、遠い岸辺から流れる小さなメロディーが聞こえるかもしれません。私自身もいっとき大きなメロディーのスイッチを消して、宇宙に響く小さなメロディーに耳を傾けたいと思います。

 以上です。 税理士 舩橋信治