事務所通信 令和1年5月 

裏面にありますように人手不足で悩んでいる中小企業が世の中には多いようです。弊所のお客様でも、「人さえいれば売上が上がるのに」、とおっしゃる方は少なくありません。外国人労働者でも人材確保が難しいので、日本人の更に優秀な人材募集となりますと至難(しなん)の技(わざ)となってくるようです。
どうしたらよいのでしょうか?そもそも優秀な人材は、大企業や中堅企業を目指します。ファミリー企業に無条件で優秀な人材が入ってきて、しかも長く勤めてくれるのは土台無理な話なのかもしれません。そこは現実として捉えておく必要はあると思います。
しかし、ファミリー企業が大企業に勝る点が一つ挙げられます。それは社長と会話が出来ることです。私が25年前に入社した会社は連結ベースで11万人程度の社員がいる会社でした。刈谷の本社ビルで仕事をしていましたので、月の初めに本社ビルにいる全員がグランドに出て社長の挨拶を聞くという月次朝礼に参加していました。そこでは社長は朝礼台に上がってマイクを使い、1000人程度に対し話をします。何やら目標めいた話でした。おそらく誰もそれを真剣に聞いていなかったと思います。取り巻きの幹部達だけが共感していたのではないでしょうか?私としては、廊下で社長とすれ違うこともないし、話かける機会もない、ましてや社長に意見を言おうものなら上司から厳しい取り調べを受けるのではないかと思われるほどの距離感がありましたので、遠くに陛下(へいか)がおられるような気持ちで眺めていました。
一方ファミリー企業は、直接社長と話が出来ます。意見を言うことも出来ます。社長と未来の話をすることも出来ます。これは当たり前のことですが、大企業側から見ると奇跡的な事です。大企業では不祥事を起こせば、すぐにクビです。しかし、ファミリー企業では飲酒運転をしたからクビ、とはなかなかならないのではないでしょうか。家族的に人を大切にするのもファミリー企業の魅力だと思います。
給与面を充実させれば従業員さんの満足度も上がると思いますが、それは業績に影響されるので難しい面もあると思います。しかし、従業員さんと膝(ひざ)を突き合わせて会話をすることは今日からでも出来ると思います。経営コンサルタントの一倉(いちくら)定(さだむ)(故人)が次のような事を言っていました。「慰安旅行なんかをやっても社員のヤル気はちっとも変わらない。社員の目の色が変わるのは、未来の話をしたときだ。自分の未来を社長が心底心配してくれる。そういう姿を見て社員はヤル気を出す。」・・・まあそういうものかな、と感じました。
舩橋会計もスタッフさんの意見を聞いたり未来の話をする機会を月に一度も設(もう)けております。その他には週に一度はスタッフさんと1対1で面談して今週の予定を話しあうことにしています。忙しさにかまけて面談を忘れてしまうこともあるのですが、なるべくやるようにしています。
そのときに注意していることがあります。それは縦の関係ではなく横の関係でスタッフさんと話をしようということです。私は所長で給与を支払っているし責任もとっている。だから私が上でスタッフさんが下という縦の関係で話を聞くのではなく、全く同じ対等の横の関係で話を聞こうと意識しています。役割とか立場という次元でみると縦の関係になりますが、存在のレベル(人として魂をもって生きているというレベル)で考えると同じ世界に生きている横の関係となります。横の関係なのでスタッフさんから意見を言われても、有難いものとして受け入れることが出来ます。物事を横の関係性でみると生きていくのが楽になるような気がします。ですので私は子供も妻も全く対等の横の関係で考えています。妻や子供は私にガンガン注意をしてきます。でも全然腹が立ちません。子供は幼児なので、とんちんかんな事を私に言ってきますが、子供の立場からみればそれは真実だと思うのです。存在のレベルで全く同じ地上にたった人物から注意をされていると思っているので怒る必要がありません。これを自分より下の人間が自分に意見を言っているなどと考えてしまうと、メラメラと怒りの感情が湧き出てしまうのではないでしょうか?
切手を貼ってくれる従業員さんがいなければ社長業は出来ません。廊下を掃除してくれる従業員さんがいなければ社長業は出来ません。形をかえてみんな重要な役割を担(にな)ってくれています。役割の循環や連鎖があって組織が成り立つと考えれば、縦の関係よりも横の関係で捉える方がしっくりきます。
話がかなり遠回りしてしまいましたが、人材の確保が難しい今、せめて今いる従業員さんがやめないよう、出来ればヤル気を出してもらうように何か取り組みを始めなければならないのかもしれません。そのときお金で解決できればいいのですが、お金には限界がありますので、社員さんとの会話というファミリー企業ならではの手法を採(と)られたらどうかと考えるのです。そして本当に会話をする段階になったら役割・立場の縦の関係性でなく存在レベルの横の関係性で柔軟に従業員さんの意見を聞いていただきたいと願うところです。必ず大きな利益につながると思いますし、何より社長さん自身が精神的に楽になると思います。
一番しんどいのは、従業員さんとなんにも話さないで、「きっと従業員さんは不満があるだろう」とひそかに感じ続けることです。これはきつい。辛いはずです。日本には古代から草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)という価値観があります。これは草や虫や皿・机など、全てのものに魂があるという他者愛の考え方です。虫でさえも魂があり成仏していく。虫でさえも自分と同じ生き物で対等だ、という考え方を古代から日本人はしてきました。日本には川があり山と海があります。生活資源が豊かなので、自然に感謝する気持ちが育(はぐく)まれてこのような他者を愛する余裕のある精神が生まれたのでしょうか?会社経営の困難な課題を乗り越える一つのヒントとなり得る価値観だと思います。
もう気候も暖かくなり蚊(か)が土足で住居に侵入してくる季節となりました。ブーンと蚊が飛んでくると条件反射的にパチンと殺してしまう私は、まだまだ草木国土悉皆成仏の精神が足りないのだと思います。
これから暑い季節に入っていきますが、ご自愛くださりますようお願い申し上げます。           税理士 舩橋信治


税引後(ぜいびきご)利益(りえき)で考える
税理士 舩橋信治

「舩橋さん。アパート経営を勧められているのだけど、やった方がいいでしょうか?」
ある地主さんからご相談を受けました。建築会社の作ったシュミレーションを見る。
「あー、やめましょう。アパート地獄になりますよ」と私は答える。
「どうしてですか?このシュミレーションだと資金繰りは、十分余裕があることになっていますよ?」
「このシュミレーションは税金の支払いが考慮されておりません。税金の支払いをすると、借入金が返済できませんよ」
・・・そしてその地主さんは、アパート経営をあきらめました。アパート経営やフランチャイズ店募集の勧誘側が作る資金繰りシュミレーションは、必ずと言い切ってよいほど税金支払いが考慮されておりません。
例えば、売上が100円で経費が60円なら利益は40円です。そして40円から開業時借入金の返済金額30を引くと10円のキャッシュが出ます。10円残るので手を出しても大丈夫と考えてしまいそうです。
でも待ってください。税金の支払いも計算に入れてみましょう。売上100-経費60-税金16-借入金返済30=-6
税金支払いも考慮するとキャッシュが足りません。事業を始めるときは、細かな契約内容や営業戦略などに目がいってしまうので、木を見て森を見ずという状態になりがちです。その事業に手を出していいのか悪いのかを検討する際には、一番初めに税引後(ぜいびきご)利益(りえき)を算出します。そこで税引後利益が十分確保できるなら、事業を検討しても良いでしょう。しかし、この税引後利益が薄いようなら手を出してはいけない事業となります。
税引後利益が薄いのに、その後固定費削減などいくら努力しても報われません。では税引後利益は、どのように計算したら良いのでしょうか?

① まずは売上も経費も全て税抜にします(TKCソフト利用の場合には、税抜になっています)。消費税は、預かっているだけで利益に影響を及ぼさないので税抜にするのです。
② 次に売上から材料仕入や外注費などの大きな経費を引きます。
③ 次に人件費や電気代・家賃などの固定費を引きます。そして利益が出ます。
④ ③で出した利益に33%の法人税実質税率を掛け、法人税等を算出します。
⑤ ③の利益から④の法人税等を引きます。税引後利益が出ます。
⑥ ⑤で出した税引後利益から借入金などの返済金額を引きます。ここで十分プラスになれば大丈夫です。

どうでしょうか?ちょっと計算するのは、面倒ですよね。そこで私がもっとシンプルに計算式を作りました。消費税や固定費・借入返済などをいちいち計算するのは大変なので、それらも含めて以下の計算式をつくりました。この計算式に当てはめて、利益が出ているならまずは安心と考えてください。

公式  ① 仕入+外注費+人件費=A
② (売上高―A)×0.6=税引後利益
いかかでしょうか?大分シンプルになっていると思います。計算式①では、経費は仕入と外注費と人件費しか考慮しません。とっさにその場で判断したい場合には、このくらいの情報しか考えられないと思います。そして売上も仕入も税込みで考えます。税抜にする時間もないと思うので。
②では、40%引いた分を税引後利益としています。本来の法人税実質税率は33%です。7%多いです。これは消費税の負担分と固定費などを考慮して増加させています。

世界はとてもシンプルですね。売上からざっくりとした経費を引いて、それに0.6を掛ける。その金額が十分にあるなら、その事業に手を出すか更に検討を進める。それが十分にないならその事業には手をださない。たったそれだけのことです。たったそれだけの事なのですが、多くの方は税金支払いを考慮せずに事業に手を出してしまうので、失敗してしまいます。税金支払前の利益を見るか。税金支払後の利益を見るか。そこが分水嶺(ぶんすいれい)となります。
利益に0.6を掛ける。この一つの作業を行うことで、真実が、水でぬらすと文字が浮き出る水出し紙のように見えてきます。


7月10日 源泉所得税の納付

 

源泉所得税の納期特例を選択されている事業者は、今年の7月10日までに1月から6月までに従業員さんから天引きした源泉所得税を一括して納付しなければなりません。

そのため6月に入りましたら、昨年12月から5月までの賃金台帳を舩橋会計に送ってください。これは給与明細書ではなく、賃金台帳となります。

  • エクセルで賃金台帳を作成されている場合 ⇒ メールでエクセルファイルを送ってください。
  • 手書きで賃金台帳を作成されている場合 ⇒ FAXだと数字が認識できないので、郵送で送ってください。
  • TKCソフトPXやあんしん給与で給与計算されている場合 ⇒月次監査時にデータをいただきます。またはご自身で納付書を書くことも出来ます。
  • 賃金台帳を作成しておらず給与明細しかない場合 ⇒ 賃金台帳を作成していただき、郵送で送ってください。

 

【PXについて】

平成31年4月納付分から協会健保の保険料率が改定されているのは、ご存知でしょうか?給与から控除する社会保険料の金額が変化します。TKCの給与計算ソフトPX(あんしん給与)であれば、こういった保険料率も自動で更新してくれますのでミスが防げます。また社会保険に関しては、税理士業務の責任外となりますのでソフトを使い正確な計算をしていただくことをお勧めします。

 

今年の3月は、「明日までに賞与を支払いたいけど計算出来ますか?」というお電話を3件いただきました。2件は、PXを使われていましたので、リモート操作により5分以内で全ての計算を電話誘導で完了出来ました。残りの1件は、PXでなかったのでご自身で計算していただくしかありませんでした。改めて給与計算ソフトPXの便利さ(複雑な計算も自動でやってくれる部分)を感じました。

 

PXは月額3,000円(税抜)で年間36,000円です。これで舩橋会計のサポートまで付いてきますのでリーズナブルです。例えば一般的によく使われる弥生給与ですとサポートがついて92,000円(税抜)です。比較するとPXがお値打ちなのがよくわかります。またソフトのレベル面から見ても、PXの方が上を行っております。

例えばPXですと同業他社との給与水準を「中小企業の賃金指標(TKCがデータを統計)」で比較することが出来ます。その他労働保険料の申告や社会保険の基礎算定届・月額変更届などの各種届出も作成することが出来ます。

このようにしてみますとPXが利潤優先で開発されたのではなく、給与計算ソフトを使っていただくことにより業務効率を上げていただきたいというTKCの理念が感じられます。

 

春には社会保険の基礎算定届を提出します。次は労働保険料の申告があります。そして源泉所得税納付・・・。会社は税金計算だけでなく給与関連でも多くの手続きを要します。これらは全て給与計算ソフトPXで処理できます。PXで業務の効率を図っていただきますようお願い致します。

税理士 舩橋信治