事務所通信 令和1年10月

裏面にありますようにTKCの会計ソフトには、財務状況について計画と現実を比較する画面があります。これはなにもTKCでなくても計画と現実を比較するという行為は、経営者にとって大切なことです。紙と鉛筆があれば計画は書けます。

 そしてこのように計画と現実を比較することを予(よ)実(じつ)比較(ひかく)といいます。予実比較の話をしますと多くの経営者は次のようにおっしゃいます。「まー、計画だから、違ってきますよ。計画通りには行きませんね」と。確かに計画であるならばその通りです。しかし舩橋会計でいうところの計画は、理想としての計画ではなく必要最低限の「これだけ達成しなければ会社が機能不全に陥(おちい)りますよ」という目標数値になります。

 ダムの水位をイメージしてください。ダムは水不足で貯水率が下がると一般市民に水の使用を控えるよう呼びかけます。その貯水率は、ダムの水位に着眼しています。水位がある基準を下回ったら、それは水不足を警戒しなければならない状況に入ったことを示します。その水位の基準と計画は似ています。だから本当は計画という表現は正確ではなく、必要最低売上高とか必要最低利益という表現の方が適しています。

 ではその必要最低売上高(計画)は、どのように求めるのでしょうか?それは、必要資金から逆算します。以下の順序です。
① 年間の借入金返済が200万円ある。
② その200万円を返済するなら税金負担を考慮して300万円の利益を出さなければいけない。
③ 300万円の利益を出すためには経費が700万円あるから1,000万円の売上高が必要だ。
④ 年間1,000万円の売上達成のためには月間83万円の売上高が必要だ。

このように逆算から求めた数値が必要売上高(計画)です。だから正しく言い換えると次のような表現になります。
【よくあるコメント】
計画売上より現実の売上が下がるのは仕方ない。所詮(しょせん)計画だから。
【適切な言い換え】
必要売上高より現実の売上が下がってしまった。必要資金から逆算しているのでこのまま行くと資金ショートを起こすぞ。
【よくあるコメント】
計画より現実の売上が上がった。やったぜ。
【適切な言い換え】
計画より現実の売上が上がった。計画は必要売上高としての最低限の基準だ。これを上回るのは当然なので、今後も気を引き締めて経営をしなければならない。この調子でいくと半年後の資金残高や納税金額がどれくらいになるのか心配になってきたぞ。舩橋さんに電話してどれくらいになるのか聞いてみよう。

 このように私の文章を読んでいると「心配ばかりしろって言ってるな」と思われるかもしれません。そうです。その通りです。心配ばかりして欲しいのです。経営は、そもそも保守(ほしゅ)主義(しゅぎ)で行うべきものだからです。常に最悪の状況を想定して経営をする必要があると考えます。そもそもファミリー企業を継続させていくということは至難(しなん)の技(わざ)です。社会保障や労働法のルールは、大企業や公務員を基準に作られています。資金力の乏しいファミリー企業がこれらのルールの中で何の頼りもなく経営をするということは大変だし、実際に新設会社の90%以上は10年後に潰れています。なので、保守主義で経営を考えてちょうど良いのではないか、と私は思うわけです。 税理士 舩橋信治